てんかんについての知識

●てんかんとはどのような病気ですか?

1."てんかん"とは
てんかんとは種々の原因により起こる慢性の脳障害で、大脳の神経細胞の過剰な興奮に基づく発作(てんかん発作)を繰り返すものであり、そして大脳内の興奮の場所や広がり方により様々な発作型と検査の所見を伴う病気です。現在てんかんは約30のてんかん症候群に分類されていますが、それぞれで治療薬が違うため、正しく治療するためにはこの分類に拠って正しく診断することが非常に重要です。

2.どれほどあるか?
てんかんは子供から大人まで、どんな年齢にも見られますが、およそ3分の2は15歳以前に発病し、人口1000人に8-10人程度と見られています。

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●どのような検査と治療をするのですか?

1.検査・・・てんかんを正しく診断して的確な治療を行うためには種々の検査が必要です。
1)脳波検査
脳波検査は、脳細砲の電気活動の乱れ(前述した神経細胞の過剰な興奮)の有無を知るのに役立ち、てんかんの診断には欠くことのできない検査です。検査は、頭皮に電極を貼って眠っている間に終わります。
また診断が確定し治療が開始された後も、病状の経過を見るため定期的な検査が必要です。どの程度の間隔で検査が必要かは、主治医が判断しますが、常識的には少なくとも半年に1回は検査を行うことが望まれます。
2)血液検査および薬物血中濃度
抗てんかん薬は長期間にわたって服用するため、自・他覚症状がなくても、定期的に貧血や肝臓の機能などの血液検査が必要です。また血液中の抗てんかん薬の濃度の検査も行い、投与量が適当かどうか、個々の体の状態に合せて治療計画を立てます。
3)画像診断(CT,MRI,SPECT,PET)
外傷や種々の病気による脳の損傷や脳腫瘍・脳の奇形など、様々な脳の病気からてんかん発作が起きることがあるため、画像診断もてんかん診断には欠かせません。一般的にはCTおよびMRI検査がよく用いられます。その他SPECT,PETといった検査もなされることがあります。
当院ではこれら画像検査は他院にお願いして撮っていただいています。

2.治療
一部の発作型を持つ場合には外科的治療(手術)が有効な場合もありますが、てんかん治療の主体は抗てんかん薬による薬物療法です。
抗てんかん薬は、てんかん発作をひきおこす脳細砲の異常発射をおさえ、それが大脳の中へ広がるのを止めるものであり、長期間にわたって規則正しく服用することが必要です。どの薬もはじめから長期に服用することを前提として作られており、のんだりのまなかったりといった状態では充分な効果が望めません。またどの薬にも多少の副作用がありますが、発作型に合った薬剤を適切な量だけ服用し、定期的に検査を行えば、副作用を防ぐことも可能です。副作用を恐れて服薬量を自己調整すると、発作が悪化するばかりでなく、場合によっては発作が止まらなくなってしまう、いわゆる発作重積状態を引き起こすこともあり、非常に危険です。決して自己調節せず、まず主治医と相談して下さい。
妊娠中に薬を服用すると胎児に奇形が現われる頻度は一般の人より少し高くなるが、妊娠初期の薬の種類や量が少ないほど、この危険性が減少する事も知られています。妊娠の可能性があるときには、できるだけ早い時期に主治医に相談することが望まれます。

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●発作が起こったらどうすればいいの?

1.観察と記録
発作が起きた時は、まわりのものはまず落ちついて行動することが大切です。 呼びかけに対する反応、表情、顔色、頭や眼の動き、手足の動きと硬さ、発作の持続時間、発作後の状態(麻痺の有無、意識の状態、睡眠、体温など)をできるだけ観察し記録してください。また意識が保たれる発作で、患者さん自身が発作の前や最中の出来事を覚えている場合には、忘れないようにそれを書き留めておいて下さい。

2.処置
発作症状は、患者さんによりそれぞれ異なります。それぞれの発作に対する処置については前もって主治医に確認しておいて下さい。

例:いわゆる「けいれん」発作に対する処置

  • たいていの「けいれん」発作は1分以内に終わるので、周囲のものはその間落ちついて発作の様子を観察する。
  • 発作が治まったら毛布あるいは敷物の上に寝かせる、あるいは患者さんが危険な場所にいるときには、安全な所へ移す。ぴったりとした衣服、特に襟元がきつい場合は緩め、もし吐物を口の中にためている場合には、それを出させるように、横にあるいはうつ伏せにする。
  • 一度発作が起これば周囲の人がどの様に働きかけてもそのまま続くので、途中で無理に止めようとしてはいけない。
  • 呼吸停止は一時的なので、無理に蘇生を試みないこと。呼吸が戻った後いびきのような大呼吸をするようであれば、気道を開くために顎を上方に引き上げる。
  • むしろ口の中を傷つけたり、歯を折つたり、嘔吐を誘発したりすることがあるので、口の中に無理に物を入れようとしないこと。
  • 発作が終わった後に、眠るようであれはそのまま寝かせておく。次のけいれん発作が起こったり、あるいは2時間以上経過しても覚醒しなかったり、無目的に動き回つたりした場合は、かかっている医療機関に連絡し指示を仰ぐこと。激しいけいれん発作が10分間以上続いて止まらない場合には、救急車を呼んで近くの救急病院を受診すること。

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●日常生活や社会生活での注意点は?

1.生活
睡眠不足は発作を起こりやすくします。仕事や止むを得ない事情で夜更しをした場合には、睡眠不足が続かないようにするか、あるいは睡眠時間は短くとも生活のリズムを崩さないようにして下さい。
食事については制限はありません。香辛料、コーヒ-、タバコも常識の範囲内で結構です。しかしアルコールは酔った後に発作を起きやすくするので飲まないのが理想的です。

2.薬の服用方法
繰り返しになりますが、てんかん治療は、抗てんかん薬を飲んで発作を起こらなくすることに尽きます。この薬は他と違い、毎日決められた量をきちんと飲み続けてはじめて効果を保つことができるものであり、時々飲み忘れたりしていては効果が望めません。
忘れた時には、気づいた時点でまず1回分を飲み、次の薬と近い時には1から数時間遅らせて次の分を服んで下さい。その日の薬はなるべく全部服むことが望まれます。余分に飲んだ場合は、その種類や量によって対処法が違うので、主治医の指示を仰いで下さい。吐いた場合は、服用直後(およそ15分以内)ならば、もう一回分を重ねて服用する必要がありますが、それ以上時間がたっていればその必要はありません。食事をしなかった場合も薬は服用しなければいけませんが、その意味からもなるべく食事は規則的にとることが望まれます。

3.他の病気・けがの場合
風邪、下痢など他の病気やけがの時にも、原則として抗てんかん薬は継続して服用する必要があります。ただし、飲んでいる薬の名前と量を、その病気の主治医に知らせる必要がありますし、また、てんかん治療の主治医にも、他の医師に処方された薬を教えて下さい。両方の薬を飲んでいて著しい体調の変化があった時は、すぐに主治医に連絡して下さい。

4.予防接種
予防接種には様々な種類がありますが、その種類によっては、また発作型や年齢によっては、接種した方が良い場合とそうでない場合があるので、主治医に相談して下さい。

5.学校生活
発作がよく抑制されていれば、体育、水泳や修学旅行、キャンプなどの行事には、なるべく参加させるべきです。しかし発作が抑制されている場合にも十分な注意のもとで行う必要があるため、発作の様子を先生に知らせ、相談しておいて下さい。

6.就労・免杵・資格
てんかんであるという理由から避けねばならない職業は基本的にはありません。現在本邦のてんかん患者さんの70-80%は定職に従事しています。しかし免許・資格の中には規則によって取得できないものがあり、自らは希望しない職種に就かざるを得ない方も多いようです。特に自動車の運転免許の取得制限は就労を困難なものにする大きな要因となっています。自動車の運転については、適切かつ規則的な服薬がなされ、2年間以上の無発作および脳波正常期間という条件が満たされれば可能ではないかというのが今日のてんかん専門医間での大勢の意見ですが、道路交通法上は依然として絶対欠格事由のままです。てんかん患者さんの就労に対する本邦の法的援護措置は皆無に近く、この点は今後できるだけ早く是正する必要があります。
てんかんという病に対して大なり小なりの社会的偏見が存在し、このことが就労の障害となっていることは事実といわざるを得ません。これについては社会的啓蒙とともに疾病の一日も早い原因究明が求められます。一方で就労に影響を与える要因についての多くの医学的研究では、意外にも発作型や発作頻度よりもむしろ社会的柔軟性、神経心理学的機能、就労意欲、精神症状、教育期間、薬物の副作用などの影響の方が大きいという統計結果が報告されています。つまり就労に影響を与える要因としては、発作型や発作頻度、誘因など発作の影響ばかりでなく、性格および知的能力、作業能力、対人関係能力なども考えなければなりません。

7.生命保険
生命保険に加入する場合に、健康状態を伝える(告知する)義務が生じます。てんかん発病後にそれを告知して保険に加入することは、残念ながらほとんどの場合困難です。現在加入中の保険については、加入後に「てんかん」が発病したのであれば、定款上特に制限がなければ給付は受けられます。

追記.日本てんかん協会  てんかんによって起こってくる悩みや苦しみを解決するために患者・家族を中心に専門職、ボランティアの参加と協力によってつくられている市民団体です。機関誌の発行、講演会・相談会、書籍販売、キャンプ・バザー等の催し、調査・研究等幅広い活動を展開しています。16歳以上であれば誰でも入会できます。 詳しくは本部(03-3202-5661あるいは日本てんかん協会ホームページ)にお問い合わせください。

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